「ソフトカツゲンの神秘」
2002.08.03


 最近、ソフトカツゲンの喉越し爽やかさに胸ときめかせている香陸です。こんばんわ。ハードカツゲンを所持している方はいま、そう、いま、ご一報下さい。千円までなら出しましょう。

 ところで、唐突ですがカツゲニストの僕に言わせてもらいますと、ソフトカツゲンを飲むときは決して栄養素はどうなっているのかとは気にしてはいけません。ソフトカツゲンは夢を売る飲み物です。考えてもみなさい、ある暑い夏の日、日照りが強い蒸し暑い日です。おばあちゃんの家に遊びに行ったよしおが縁側で涼んでいると、「トンッ」とお盆から、少し汗をかいたコップがおばあちゃんによって床へと下ろされます。

 「おばあちゃん、これ、なあに?」
 「これかい。そうだねぇ、ほれ、まぁ、良いから飲みなさい」
 「へえぇ……牛乳だったらいらないよぅ……」

 ごくり……おばあちゃんにいわれて一口飲む、よしお……そのよしおの目が輝きだすのが見て取れます。おばあちゃんはにんまりして、庭のひまわりに目を細めます。

 「おいしいよっ! おばあちゃん、すごいやっ!」
 「よかった……」

 あばあちゃんは何も言わずに、お盆を持って台所へと戻ります。少しして、じーっじーっとやかましい蝉の鳴き声を目で追いながらよしおは足をばたつかせ、裏山へと走り出していきます。そして、台所からは夕飯の準備をしているおばあちゃんの包丁の音がとんとんとん……。


 これです!


 牛乳じゃあ、こうはいきません。なまじ、栄養価など気にしてしまうとこのよしおの神秘的な体験は決してあり得ないのです。そして、そのうち大人になったよしおは夏の日に涼みに入ったコンビニで何気なく手にしたソフトカツゲンを飲むことで、子供の頃に飲んだあの味を思い出すのです。そして、にっこり微笑んでコンビニの外のゴミ箱に空になったソフトカツゲンのパックを捨てると、こう言います。


「今日も、暑いな……」


 これです!

 だめなんです、カルピスじゃあだめなんです。もう、カルピスの安直な甘さでは子供の心はつかめません。全国のおばあちゃんはいますぐ、ソフトカツゲンに手を伸ばすべきです。ポイントは決して「ソフトカツゲン」という名称を口にしてはいけないことです。ソフトカツゲンは諸刃の刃ですから、子供の頃にこの名称を知ってしまっては、もしかすると逆効果で子供は一気にその気力を萎えさせてしまうかもしれません。大人になって、ああ、「こんなものだったんだな……」と思わせなければいけないのです。

 ですから、いますぐ、全国のお母さんはソフトカツゲンから手を引いてください。おばあちゃんとよしおのために、そんなにジュースばっかり飲ませてるんじゃない! 夏は麦茶を飲ませなさい。そして、この夏一番、そんな暑い日の昼下がりにおもむろにアイスコーヒーを子供に出してあげるのです。普段は口にすることの無い「大人の味」に胸をどきどきさせながら、子供たちはコップを手に取ることでしょう。それはちょっと苦いんだけど、甘くって、何だか自分が少し大人になったような気になるのです。

 このようにして、適度に人生を演出するんです。駄目ですよ、そんなに勉強させたかったら、まずは高原に連れて行って羊に会わせなさい。メーって鳴いているところを見せてあげなさい。そんなこともしないで、リャマがどこに生息しているかなんて覚えさせても意味が無い! タロイモより先に、まずは大通公園でじゃがいもでも食べさせることです。

 ああ、ちょっと、興奮してしまいましたね……。ところで、最後に僕はあえて聞きたいんですが、ソフトカツゲンってなんなんですか? どうやって作ってるんですか? ていうか、むしろ、何から採れてるんですか? 飲みものとして圧倒的な謎を抱ええたままに、ちゃくちゃくとその歴史を伸ばしていっているソフトカツゲンにこの夏、香陸は注目しています。

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