寒い。
 窓の外をふいと見る。
 台風が吹き荒れていた。

 ところで、僕は風邪をひかない。
 どうしてかというと、年がら年中、風邪をひいているのだ。
 つまり、風邪をひかないというよりは、常に風邪をひいているのである。

 しかし、風邪をひかない人間といえども風邪のような状況に陥ることがある。
 そんな時、風邪をひかない人間がどうなってしまうかというと、
 風邪をひかない人間は「酷い風邪」をひいてしまう。

 これが結構大変だ。

 まず、立てない。
 ぷるぷると震えて、さながら生まれたばかりの馬である。
 そういう意味で、風邪をひかない人間はときおり、生まれたばかりの馬になる。

 しかし、この日は凄かった。
 目を覚まし、身体を起こすととりあえず倒れた。
 台風が頭の中に入ったのだろうか、視界がグワングワンと揺れる。

 これは立てないほどの台風が来ていると思い、そのまま眠ることにした。

 うとうとと夢見心地のまま、目を覚ますと台風は過ぎ去っていた。
 空は青いし、雲は白かった。
 鳥は普通に飛んでいたし、部屋はいつも通り汚かった。

 僕はいまになっても、あの時の揺れが台風だったのか、
 酷い風邪だったのかわからない。