今朝、犬が一匹、ワンと鳴いた。
 尻尾を左右に振りながら、列車に乗り遅れそうな僕にたいして、
 はぁはぁと舌をだしながら、ワン!

「馬鹿だな」

 飼い主がいるにもかかわらず、僕は犬に話しかけた。
 多少、むっとした飼い主がその犬を連れ去ろうとしたが、
 そこでまたその犬が、ワン!

 その犬はほとほと可愛げしかない犬だった。

 飼い主も「ちょっと本当のことを言われてしまった」という顔つきで僕に頭を下げた。
 僕は微笑んだ。
 いえいえ、犬は好きですから。

 だが、そうして歩いていると次はごみを漁っていたカラスが、クアァ!

 僕は立ち止まってカラスを見た。
 トンッ、トンッ、トンッ、とカラスが跳ねるように歩くと、クアァ!
 僕がそれでも様子を眺めているとカラスはいい加減呆れたのか、クアァ!

 クァ?

 僕はカラスに、いや、すまなかった、邪魔をしたと謝ると駅へと急いだ。
 そのカラスは怒っていた。