|
「冬みかん」 冬みかんと灰色の空というのは、たいがいセットになっている。 冬みかんを食すと急速に空の色が変わりだす。 薄いながらも、なんとか青かった空が、あっという間に灰色だ。 自殺者が増える。 危ない人はできれば、冬みかんだけは食さないほうが良い。 冬みかんを食すと青空はまっさかさまに灰色の空になる。 その灰色の空は、青かった空である。 これがいけない。 冬みかんは空の色を変える。 自殺者はみな、冬みかんを食しているのである。 家には食しかけの冬みかんが、ダンボールで残っているはず。 もしかすると、それを踏み台にして首を吊った人もいるかもしれない。 冬みかんのダンボールは頃合なのである。 炬燵に入って、冬みかんを食す。 テレビを観て、笑う。 あまりにも……。 僕は、冬みかんが好きだ。 テレビも観ないし、炬燵もないけれど、冬みかんは食す。 冬みかんは小さいのが良い。そもそもが冬みかんは小さいのだ。 冬みかんの小ささこそが、すべての不安の種なのである。 冬みかんは幸せだ。 冬みかんは優しい。 冬みかんは温かい。 そういうものは、いつだって、大勢の人を殺しているのだ。 |
| Copyright (C) 2002 Kourick All Rights Reserved. |