諸君、聴け。
 聴きたまえ、諸君。

 老いも若きも男も女も、
 聡明なる者も愚かなる者も、
 善き者も悪しき者も健やかなる者も病む者も、

 聴け。
 聴きたまえ。

 聞き、聞こえ、聞こえうる者達よ、
 諸君、一様に私の言葉に耳を傾けたまえ。

 たとえ諸君に脳があり、身体があり、意識があり、
 良識と知識を持ち、明晰で厳格な判断ができ、
 厳密で確実な論理を操れ、万物と全現象を明確に思考でき、
 抽象と具体を軽快に渡り歩き、経験と実績に満ち溢れ、
 慈愛と友愛に富み、善を行い悪を絶ち、
 強固な精神と迅速で確かな行動力と判断力、
 さらには端麗にして耽美な容姿と、
 無駄のない洗練された感覚や感性といった、

 これらすべての、
 どれひとつの要素をも、仮に諸君に備わっていなかったとしても、

 聴きたまえ。

 そして、その限りにおいて諸君は私の言うことを理解でき、
 そして、決して理解できないということがないだろう。

 諸君、私はヨサコイソーランが嫌いだ
 諸君、私はヨサコイソーランが嫌いだ

 諸君、私はヨサコイソーランが大嫌いだ

 唄が嫌いだ
 踊りが嫌いだ
 衣装が嫌いだ
 メイクが嫌いだ
 動きが嫌いだ
 叫び声が嫌いだ
 旗が嫌いだ
 ライトが嫌いだ
 笑顔が嫌いだ
 鳴子が嫌いだ
 笑い声が嫌いだ
 制度が嫌いだ
 意識が嫌いだ
 感性が嫌いだ

 歩道で、車道で
 公園で、盛場で
 バスで、電車で
 駐車場で、地下鉄で
 舞台の上で、観衆の前で

 この札幌で行われるありとあらゆるヨサコイが大嫌いだ

 隊列を組んだ踊り子の一斉発狂が爆音と共に民衆を威嚇しだすのが嫌いだ
 空中高く放り上げられた衣類が突風に煽られて頭上に舞い落ちた時など心が弾け飛ぶ

 地方車に載る奇怪な装飾物など目にするだけで虫唾が走る
 轟音を立てて騒音を撒き散らす地方車の上から、和太鼓の不躾な振動と共に礼儀知らずで奇天烈な煽り声が聞こえてきたときなど胸がむかついて堪らない

 衣装を揃えた踊り子の隊列が意図的に編隊されているのが嫌いだ
 恐慌状態の踊り子が既に失望した人間を何度も何度も笑顔で屈服せしめようとしている様など戦慄すら覚える

 経済効果と物珍しさだけで市中を我が物顔で闊歩する様などはもう堪らない
 泣き叫ぶ子供達を目の前に悪辣にして辛辣窮まる薄弱な規範意識と共に金切り声を上げながら公共空間にたむろにする狂乱人など最悪だ

 哀れな幼い、年老いたあるいは静けさを求める通行人達を雑多な公害道具で都市の印象と道徳と理想もろとも木端微塵に粉砕する時など悪魔とすら感じる

 無知な行政機関に祭りを滅茶苦茶にされるのが嫌いだ
 必死に守るはずだった人々の意志が蹂躙され女が男が子供が感化され洗脳され何の疑問も抱かずに受け容れている様はとてもとても悲しいものだ

 情報と艶やかさの物量に押し潰されて楽しみが殲滅されるのが嫌いだ
 テレビカメラに追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

 諸君、私はヨサコイを、この地獄の様なヨサコイを嫌悪している!
 諸君、私に付き従うアンチ・ヨサコイズム諸君!
 君達は一体何を望んでいる?

 更なるヨサコイを望むか?
 情け容赦のない糞の様なヨサコイを望むか?
 贅沢豪奢の限りを尽くし、一般市民の平穏を穢す嵐の様なヨサコイを望むか?


『戦争! 戦争! 戦争!』


 よろしい、ならば戦争だ!


 我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
 だがこの暗い闇の底で12年もの間堪え続けてきた我々に
 ただの戦争ではもはや足りない!!

 大戦争を!!
 一心不乱の大戦争を!!

 我らはわずかに数百数千に満たぬ敗残兵に過ぎないのかもしれない
 だが、諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
 ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる

 我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
 髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
 連中に恐怖の味を思い出させてやる
 連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる

 北区と南区の狭間には奴らの哲学では
 思いもよらない事があることを思い出させてやる
 一千人のアンチ・ヨサコイズムの戦闘団で
 札幌を冷やし尽くしてやる


 征くぞ、諸君!