おっけー、ばっちりだよね。なんていうのかな、こういうの、わかるかなー? ある雨の日の夜のことさ。夏ね、ちょっとじとっとしていて、昼の暑さを洗い落とすように夕飯を食べ終わったあたりからしとしとと雨が降り出したわけ。そんな夜はいつもの喧しい虫の音も聞こえません。どこかで静かに息を殺してるんだろうね。

 僕は安っぽい平屋に住んでいて、明かりといえばちょっと古い白い蛍光灯。奥の部屋には裸電球がぶら下がっててさ、それはソケットに着いてる黒い部品を右に捻ると回路が開いて電流が通る、そんなアナログな照明なわけ。だけど、オレンジ色の光が妙に温かいんだ。すごい、柔らかいのさ。その下に古い布団が何枚も用意してあってさ、それに入って僕は寝るわけ。まるっきり、鳥の巣みたいさ。

 誰が観るともしれない野球中継なんかがラヂヲ代わりに付いててさ、巨人が勝っているわけ。三者凡退が何回か続いたあとに巨人の四番がいきなりホームラン。観客なんか「わー!」とか言っちゃって、実況アナウンサが興奮して打球を追うわけ。隣では解説のなんとかさんが冷静に風向きとかピッチャの投球とかを説明したりする。

 そこで、ぱちん。

 僕はでっぱっているぼたんを押す。ひゅんって真ん中に白い線が走ってさ、本当にぷつんっていって消えるんだ。そのときのテレビの色ってほんと黒いんだよね、宇宙みたい。入るときと消えるときの落差が激しいのさ。それって人間みたい。消えちゃうときってほんとに一瞬なのさ。

 僕は網戸を開けてさ、雨の音に耳を澄ますわけ。胡坐なんかかいちゃって、目の前の畑とか、草とか、木とか、石とか、空とか、雨粒とか、その向こう側にある暗闇とか、そういうところにあるいろんな音を楽しむのさ。それって実はさ、全然楽しそうに見えないんだよね。しぶーい顔してさ、ざーざーっていう音を凝視しているだけなのさ。なにを感じるわけでもない。ただ、黙って、雨の音を見る。それが風流なのさ。それってさ、楽しいじゃない。

 僕ってなんていうのかな、なかなか、ほら、しみじみとしているわけじゃない。だからさ、別に僕が正しいだのなんだの言うつもりはないけどさ、みんな、間違ってるよなーって思うよ。間違うってあれかな、もしかしてファームな単語? わかってないっていったほうがいいのかな。別にいいけど。笑ってれば楽しいんだなんて乱暴な理屈がまかりとおるなんて信じられないよ。そんなのおしつけさ。

 そんなのってまるっきり馬鹿じゃない。わかってないのさ。そういうことじゃないんだってことをさ。あるよね、こういうことって。おじいちゃんとかおばあちゃんとかがさ、子供が喜ぶと思って頭を捻ってプレゼントしたつもりなんだけど、全然、的外れなんだってこと。それって悲劇さ。責めるに責められないじゃない。そして、哀しいし、嬉しいんだ。

 ああ、だめ。