「ねえ、おじいたまー、休止ってなあに?」
「ふぁっふぁっふぁ、休止とは、なかなかオツだなあ……休止かい?」
「うん」
「それはね、冬眠みたいなものだよ」
「冬眠?」
「そう、だから、お休みする前にいっぱい楽しいことをしないとだめだよ」
「もうしたー」
「いっぱい?」
「いっぱいー」
「じゃあ、いつでも冬眠できるね」
「もう、寝るよう」
「ふぁっふぁっふぁ、そうしなさい」
「でも、どうしてわたしってば寝なきゃいけないの?」
「眠いからだろう?」
「…………」
「起きていても良いんだよ?」
「でも、そしたら、明日眠いもの」
「そうだね」
「おじいたまは眠いことってないのかしら?」
「あるよ……でもね、おじいたまはいつだって眠いんだ」
「眠ればいいのに」
「そのときがこればね」
「…………」
「寝たね?」
「ぴー、すかー……」
「おやすみなさい」
「おやすみなさいー」
「寝なさい」
「あーい」

       *       *       *

「おはよー」
「ふぁっふぁっふぁ、もう起きたのかい?」
「眠いよう」
「まだ、もうちょっと寝てればいいじゃないか」
「だって、もったいないですもの」
「なにがだい?」
「もったいが」
「もったい?」
「もったいだよ」
「そうかそうか」
「あたしってば、もし、起きたら、もったいだけは大事にしようって決めてたの」
「いいことだね」
「もったいは粗末にされすぎだわ」
「まあ、たしかにないことが多いね」
「おじいちゃんはもったいある?」
「ふぁっふぁっふぁ、あるさ、いっぱいあるよ」
「すごいなあ」
「むしろ、おじいちゃんはもったいだよ」
「ふぁあああ」
「いい欠伸だ」
「あたしももったい、ほしい」
「ふぁっふぁっふぁ、それは望めば、もう手に入っているのさ」
「あたしももったい、もってるの?」
「それを知ったら、もう、それは失われてしまうのさ」
「難しいよう、もったいの癖にぃ」
「雲の後ろに空があることを、われわれは信じるしかないのだよ」
「空にあるのが雲なのでは?」
「それは雲に言及するとき、すでに空が前提されているということかい?」
「うん」
「ふぁっふぁっふぁ、それはお目が高い」
「むー、ところでおじいたま」
「なんだい」
「雲は上に雨があるのに、雨を感じるのは下でだわ、これはどうしてかしら?」
「上にあるってことは、下に落ちるしかないからね」
「じゃあ、あたしたちは下にいるってことなの、それってなんだか寂しいわ」
「ふぁっふぁっふぁ、でもね、雪の下には存在があるんだ」
「存在?」
「そう、存在、しかし、こいつの本体はどこにも見当たらない」
「飛んでも跳ねても?」
「歩いても走っても、私たちがそこにいないように、彼もそこにはいない」
「それって本当に寂しいわ」
「ただ、そっとね、雪が溶けて、誰かが自分に寄り添うのを待っているんだ」
「ふーん」
「どう? 彼は寂しいだけかな、それは何のための寂しさだろう」
「わからないけど……もしかしたら、それは、ちょっと楽しいかも」
「かもしれないね」
「どきどきしちゃうね」
「そのどきどきが雪を溶かすのさ」
「おじいたま、素敵だわ」
「惚れるなよ」
「あはは!」