言葉、最後の振動。
 誰かが、なにかを呟いた。
 それは僕の言葉だったか、違ったか?

 いつだったのか、それも覚えていない。
 いつだとしても、通り過ぎてしまえば同じだしね。
 だとしたら、まあ、未来だって同じようなものじゃない。

 ともに僕にはわからない。忘れてしまった。
 僕って物理法則だけに従って動いてるオブジェクトなのかもね。
 だけど、人間ってやつの本質にはさ、記憶なんて些細なものだよ。

 実を言うとね、僕はその時から、なにも喋っていない。
 いや、病気じゃないよ、ただ、誰も話す相手がいないのさ。
 まあ、病気ってそもそもそういうものなのかもしれないけどね。

 あれさ、寂しい言い方をすると、僕なんてそんなもの。
 だけど、同じことなのにこんなに嫌な表現ってないよな。
 僕だったら、その卑屈加減に笑っちゃうよ……他人事ならね。

 でも、誰もいないでも、自分がいるじゃない?
 自分に話しかければ、自分が僕の相手をするかもしれない。
 今日はね、こんなことがあったんだ。ふうん。すごい、つまらなかったんだ。

 そうだ、これは難しいところだ。
 しかし、君、自分に向かって話しかけれるかい?
 自分が話して、自分で聞いて? 僕は馬鹿じゃないんだよ?

 それにだよ、君、自分ってなんだい?
 人を馬鹿にするのもいい加減にしたまえよ。
 よりにもよって、自分の中から自分を選ぶだなんて、君、最低さ。

 そうだね、何度、死のうと思ったことか。
 どれだけ、生きていることに無気力になったことか。
 別に何かを期待していたわけじゃない、求めていたわけじゃない。

 そう、だから、なんだよね。
 誰も、僕に期待していなかったし、なにも求めていなかった。
 僕はそれに満足していたし、それでも、いろいろなものが手に入った。

 生きるっていうのは、そういうことだ。不幸だね。
 君はどう思う? 死ねばいいと思うかい? 死ねと言うかい?
 僕なら言うね。そして、死んでいった。僕はいったいなんなのだろうね?

 いいかい? 物事というのは、そう、単純じゃない。
 ただ、いうほど複雑じゃない。それをわかってほしいんだ。
 生きているとか、死んでいるとか、そういうことじゃないんだよ。

 大事なのは、君が生きているということなのさ。

 しかし、大事であることを、大事にすることはない。
 そういうことができるのが、人間というものの本質なのさ。
 僕なんか、大事なことなんて、全部、忘れてしまったんだよ。

 ほら、嬉しいだろう。君は自由だ。