「あゝ、窓が黒い、あゝ、夜が暗い、どうしてここには空もないのだらう」
 そう言う度に、
「あゝ、僕は明るいところにいるのだらう、それがために僕には空すらわからない」
 と僕は思い、胸に暗澹とした気持ちが重霧のように立ち込めるのだった。

 僕は軽い眩暈を感じ、右手を伸ばして窓を閉めた。
 窓と窓の隙間にいたらしい白いもやもやとしたものが逃げていく。
 その途端、急に部屋の内圧が高まった。
 四角い空気がむっと息を詰めて肩を張る。

 そうなると僕はもう立っていられない。
 周囲を石像に囲まれる。
 目を見開いて口を横に開いている石像には表情がある。
 しかし、彼らの表情はなにも意味していない。彼らは僕を見る。ただ、それだけだ。

 僕は彼らを無視して部屋の片隅にある眠りに石を落とした。
 青緑色をした粘る水面に波紋が走る。
 澱粉の含有量の多い眠りなのだ。
 落とした石は引っ張り上げられるようにグイグイと吸い込まれていく。かなり深い。

 僕は右手と右足をそっと眠りに浸けるとそのまま背面になり、
 大きな夢を抱えてそのまま眠りに落ちていった。
 夢は重い。だから、眠りのなかは息苦しい。
 それでも、これで死ぬなら仕方がない。
 誰もがそう思うから、部屋の片隅には青緑色の池がある。

「あゝ、窓が黒い、あゝ、夜が暗い」
 と言いながら、僕は目を覚ます。
 ふっと心地の良い風が頬を撫でる。

 あゝ、窓が開いている。