奇妙な夢を見ました。ふわふわとした気持ちで僕は浮いていました。いや、それは僕が浮いていたというよりはむしろ、ふわふわが浮いていたのです。僕が僕の気持ちでしかないこの場所でふわふわが僕の気持ちであるならば、ふわふわが浮いている限り、やはり、僕の気持ちも浮いていたのです。それはふわふわでした。僕でした。

 さらに言ってしまえば、そのふわふわは、ふわふわのように振舞う、本来、ふわふわじゃないものでした。僕はそこまで気付きました。これは本当はふわふわではないのだと。そういったことに気付いた瞬間に僕は落ちました。ふわふわを疑ってしまったからです。

 しかしもし、ふわふわが少しでも本当にふわふわであったのならば、これほどまでに落ちはしなかったことでしょう。つまり、それはふわふわではなかったのです。だから、僕は落ちました。しかし、そのふわふわであったものは依然として、僕の気持ちではありました。そして、それは僕でもあったのです。

 ふわふわだった僕の気持ちと、落ち続ける僕の気持ちは、やはり同じものではあるのですが、どうしても異なるものなのです。それは不思議なことです。ふわふわは落ちないからです。こういった不思議に僕はしばしば出会います。しかし、それは決して不思議なことではありません。不思議を知る人に不思議はないのです。

 そうこうしている間にも、僕はしっかり落ちています。あらゆるものは落ちるのです。林檎も落ちたし、雨も落ちます。雷も落ちたし、月も落ちるのです。あらゆるものは落ち終わるまで落ちるのです。地球も落ちるし、太陽も落ちるのです。落ちなければ、飛ばされてしまうのです。そして、落ちるということは、惹かれあうということなのです。

 恋に引かれて、惹かれあう。愛に弾かれて、惹かれあう。それは惹かれあうことなのでした。そして、惹かれあうものはいつか、そのうち落ちあいます。相手に向かって落ちあいます。惹かれ惹かれてぶつかります。そうならないために、惹かれあうものたちは互いに他のものに惹かれなければなりません。

 そして、もし、そのお互いが、ともに惹かれるものを持つならば、彼らはともに進むでしょう。地球と月が、惑星同士が、ともに太陽に惹かれるように。そのようにして、ただただ、僕は惹かれてる。相手のないまま惹かれてる。矛盾を抱えて、惹かれてる。虚構を抱いて、惹かれてる。なぜなら、ここはふわふわだから。

 ぼちゃん!

 ぷわ。過去に落ち、いま落ち続けて落ち終わる。かつてふわふわだったものは、いつの間にか落ち始め、未来においてはやはり、どこかに落ちるのです。そうしてそれは、たまたま海だったりするのです。そういうわけでここは海。ぷかぷかぷわりと浮いています。

「あ、かもめだ」

 あはは、可愛いなあ。いてて。